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技術解説

第1回:センサーのすべてがわかる!組み込み技術者のための基礎知識

スマートフォンで天気予報をチェックしたり、自動ドアが人の存在を感知して開いたり、さらには健康管理のためにスマートウォッチを身につけたり——これらはすべてセンサーの技術によって実現されています。

このように、私たちの日常生活は、気づかないうちにセンサーによって支えられています。

第1回の今回は、センサーの種類や原理の基本について、分かりやすく解説していきます。

はじめに

センサーは、組み込みシステムにおいて外界の情報を取り入れるための重要なデバイスです。温度や光、加速度などの物理量を計測し、その情報をもとに制御や判断を行います。この記事では、センサーの基本から応用までを広く浅く解説します。

センサーの基礎知識

センサーとは

センサーとは、物理的な現象を検知し、それを電気信号に変換する装置です。例えば、温度センサーは周囲の温度を検知し、それに応じた電圧や電流を出力します。

外界の情報を得るための機構が内部に組み込まれていることが多いです。

センサーの役割

組み込みシステムにおけるセンサーの役割は、人間にとっての目や耳にあたり、外部環境を正確に把握することです。こうして得られたデータをもとに、適切な処理と適切な制御をすることで、自動化や高精度な制御が可能となります。

AIもデータを扱います。そういったデータも、センサーを用いて集められます。

センサーの動作原理

物理量の検出と電気信号への変換

センサーは、まず物理量(温度、光、圧力など)を検出部で感知します。次に、その物理量の変化を電気信号(電圧や電流)に変換します。この電気信号はアナログまたはデジタル信号として出力され、マイクロコントローラなどで処理されます。

センサーの基本構造

一般的なセンサーは、以下のような構造を持ちます。

名称役割
検出部物理量を直接検知する部分。
変換部検知した物理量を電気信号に変換。
出力部電気信号を外部に出力。

主要なセンサーの種類と特徴

ここでは、代表的なセンサーの種類とその特徴を解説します。

温度センサー

周囲の温度を検出するセンサーです。主な種類として以下があります。

種類特徴
サーミスタ温度によって抵抗値が変化する半導体素子。高感度で小型。
熱電対異なる金属の接合点に生じる熱起電力を利用。広い温度範囲に対応。
測温抵抗体(RTD)「Resistance Temperature Detector」の略。金属が用いられるものを指し、特性が安定している白金がよく使われる。高精度な温度測定が可能。

サーミスタもRTDも電気抵抗の変化を利用していますが、サーミスタの方は非線形(温度と抵抗が比例関係にない)なので、温度を測るというよりは「ある温度で作動するスイッチ」のような使われ方をします。

光センサー

光の強さや波長を検出します。

種類特徴
フォトダイオード光を電流に変換。高速応答性が特徴。
フォトトランジスタ光による電流増幅が可能。感度が高い。
CCD/CMOSセンサーカメラなどで使用。高解像度の画像取得が可能。

光センサーの一種として「人感センサー」があります。これは人体が発生する赤外線(光の一種)を検出するものです。

加速度センサー

物体の加速度を検出します。MEMS技術を用いたものが一般的で、スマートフォンやゲームコントローラに搭載されています。

MEMSとは「Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)」のことで、微小な部品内に機械的構造を持つものを指します。

水平、垂直方向の加速に反応するものと、それに加えて回転も検出できるものもあります。

圧力センサー

気体や液体の圧力を検出します。

種類特徴
ピエゾ抵抗型圧力による抵抗値の変化を利用。高感度。
容量型圧力による電極間距離の変化で容量が変化。安定性が高い。

これらの他に「歪ゲージ」を使ったものもあります。金属の変形を検出するため、比較的大きな力(圧力)を扱うことができます。

また、歪ゲージは重量計(荷重計)にも応用でき、そのような用途のものは「ロードセル」と呼ばれます。

タッチパネルセンサー

ユーザーのタッチ操作を検出するためのセンサーです。スマートフォンやタブレットなどのインターフェースに欠かせない存在です。

方式特徴
抵抗膜方式上下の導電層が接触することで位置を検出。安価で耐久性が高い。
静電容量方式指などの導体が近づくことで静電容量が変化。マルチタッチが可能。
赤外線方式赤外線の遮断を検出。表示面に触れなくても検知可能。

タッチパネルセンサーは、ユーザーエクスペリエンスを向上させるために重要であり、組み込みシステムにおいても広く利用されています。

静電容量方式はスマホやタブレットにも使われています。抵抗膜方式は手袋をしていても反応するため、医療やFAの現場で広く使われています。

赤外線方式は新しい方式ではありませんが、ATMや駅の自動きっぷ販売機のような装置に使われています。奥行きが必要な欠点がありますが、不特定多数の人が触れるような、衛生面を気にする場面に強いです。

センサー選定のポイント

選定の際には、主に以下のポイントを考慮します。

ポイント説明
測定範囲と精度必要な範囲と精度を満たすこと。
環境条件使用環境の温度、湿度、振動などへの対応。
インターフェースマイクロコントローラとの接続方式(I2C、SPI、UARTなど)。
サイズと消費電力デバイスの大きさやバッテリー寿命に影響。
応答速度性能に影響。速くなるとノイズに弱くなる。

「精度」は少々難しく、測定用途では「繰り返し精度」が重視されます。これは同じ物理量であれば、何回でも同じ(くらいの)値が得られることを意味しています。

このように、どのような用途なのかによって「精度」の考え方は異なります。

センサーの組み込み方法と注意点

センサーの組み込みには、主に以下の点に注意が必要です。

ハードウェア設計

項目注意点
電源供給センサーが必要とする電圧や電流を安定的に供給。
配線とレイアウトノイズや信号劣化を防ぐための適切な配線。
外来ノイズ対策シールドやフィルタ回路の導入。

最後の「外来ノイズ対策」は外からの電磁波によって信号が無用な動きをしてしまうことを防止するためのものです。

センサーの出力信号はノイズに弱い性質を持っているため、電気回路や筐体で対策するのが一般的です。

ソフトウェア設計

項目注意点
ドライバの実装センサーからのデータを正しく取得。
データ処理必要に応じたデータの補正やフィルタリング。
エラーハンドリング異常値や通信エラーへの対処。
ユーザーインターフェースユーザー操作のレスポンスや動作への反映

センサーの値を一定時間ごとに取得することを「サンプリング」といいます。一般的には、たくさんの値があればあるほど、統計的な処理によってノイズを除去しやすくなります。

温度や圧力などは変化が遅いため比較的サンプリングは少なくても大丈夫ですが、光センサーは用途によってはかなりの速度でサンプリングすることが必要になります。

ソフトウェアが高速で、かつ定時的に動作することを保証するのは、なかなか難しいものです。

まとめ

センサーを使うと、世の中のほとんどの物事が数値化できてしまいます。人間の五感のうち、味覚と嗅覚だけはまだ実用に至っていませんが、他は網羅されています(凄いですよね)。

また、人間が知覚できないものもセンサーを使えば検出できてしまいます。赤外線や紫外線のような見えない光、超音波、磁気なども数値化できます。

このように、センサーは組み込みシステムの性能や機能性を大きく左右する重要な要素です。

正しい知識と適切な選定、組み込み方法を理解することで、より高度なシステム開発が可能となります。

この記事が皆さんの理解の一助となれば幸いです。

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