技術解説

「信号」について知ろう!組み込み技術者のための初心者ガイド

信号は、私たちの生活や技術において非常に重要な役割を果たしています。特に組み込み技術の分野では、信号処理が不可欠です。

本記事では、信号の基本概念から、組み込みシステムでの応用までをわかりやすく解説します。これを読めば、信号についての理解が深まり、実際のプロジェクトに役立てることができるでしょう。

信号とは何か?

「信号」とは、情報を伝達するための電圧の変化のことです。情報とは音声、映像、温度など、センサーが生成したものや他のデバイスやICが「通信」のために生成したものなど多岐にわたります。

電圧の変化に意味(情報)がないものを「ノイズ」といいます。

信号は主にアナログ信号とデジタル信号に分類されます。

アナログ信号とは

連続的な値を持つ信号で、時間とともに変化します。例えば、音声は空気の振動として伝わるため、アナログ信号として表現されます。どの時間の電圧を取っても情報になる反面、ノイズとの区別が難しいという特徴があります。プロセッサでアナログ信号を直接扱うことはできないので、途中にADC(Analog-Digital Converter)を挟み、数値化します。

デジタル信号とは

離散的な値を持つ信号で、0と1のビットで表現されます。コンピュータやデジタル機器では、この形式が主流です。時間に対する情報量はアナログ信号と比べて大きく劣りますが、ノイズとの区別が容易です。最大電圧が決まっており、5V、3.3V、1.8Vなどがあります。0~最大電圧を何段階かに分けて情報量を増やす技術もありますが、ノイズには弱くなります。

信号が正しく伝わるためには、ノイズの影響をいかに落とすかが非常に重要です。信号の品質を示す指標として「S/N比」があり、この数値が大きいほど品質がよくなります(S/N = Signal / Noise)。

信号処理の基本

信号を処理するには、プロセッサ(CPUやGPU)が信号を受け取らねば始まりません。それまでに電気回路がある程度ノイズを低減させてくれていますが、場合によってはソフトウェアでノイズを除去する必要があります。

こうしてプロセッサが受け取った信号を、数理的な手法を使って分析・加工することを「信号処理」といいます。

「サンプリング」の重要さ

信号処理のためには、ある一定周期で信号を取得する必要があり、これを「サンプリング」といいます。そしてサンプリングをする時間間隔のことを「サンプリング周期」といいます。

この「一定周期」が重要で、取得した値をデータ群として扱う際に時間の情報も含むことができます。これにより、数理的な処理が可能になるのです。周期の逆数が「周波数」ですが、サンプリング周波数で特に注意が必要なのが「ナイキスト周波数」です。

ややこしいのでここでは詳しく触れませんが、これを避けるため、サンプリング周波数は元の信号周波数の10倍程度を目安にします。

なお、一般的に信号よりもノイズの方が周波数が高くなります。そのため、ノイズを除去(あるいは低減)するためには平均値を取るような単純な処理でも問題ないことが多いです。

分析・加工って何するの?

人間が通訳をする場面を思い浮かべてみてください。通訳のあなたは、アメリカ人と日本人の間に立って、会話を成立させねばなりません。

アメリカ人は英語で話しかけてきます。あなたはまず英語という信号を受け取ります。頭の中で英語を分析し、適した日本語に再構成し、日本人に日本語として「出力」します。

この流れが分析と加工です。実際のシステムではHDMI通信やUSB通信、センサーからの各種入力を読み取り、その内容から次の処理を決めたり、スピーカーやモーターを駆動したり、他の機器に通信で信号を送り出したりしているわけです。

組み込み機器における信号

さて、組み込み機器に限りませんが、プロセッサは信号を使って周囲を理解し、また周囲への働きかけを行っています。信号処理がないと、そもそもコンピューターシステムが成立しません。それほど「信号」というのは重要なものなのです。

機器を開発しているときは、ソフト技術者もハード技術者も「不具合」と向き合うことになりますが、明らかなものを除くと、ソフトが悪いのかハードが悪いのかがわからないこともよくあります。

そんなとき、「この信号が入っているならソフトの処理がまずそう」「この信号が出ているからソフトの処理は正しそう」というような、捜査のようなことができるとカッコいいと思いませんか?

これは信号の理解だけでなく、信号を計測するための装置「オシロスコープ」を正しく使えないとできないことです。組み込み機器を開発する人は、「自分はソフト屋だからハードのことはわからなくてもいい」のではなく、ソフト技術者もハード技術者も、互いに有意義な情報を分け与えながら協力できると、デキル奴と思われることうけあいです。

まとめ

本記事では、「信号」について初心者向けに解説しました。信号は私たちの日常生活や技術において重要な役割を果たしており、その理解は組み込み技術者として不可欠です。今後も進化する技術とともに、新しい応用方法や処理技術が登場することでしょう。これからも学び続け、自身のスキルアップにつなげていきましょう!

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