組み込みシステムにおいて中心となる部品がCPUです。
世の中にはたくさんの「コンピューター製品」があり、それはPCも含んだ非常に広い意味になっていますが、CPUはその中核となる部品のことです。
CPUはさらに、ECU、MPU、MCU、GPUのように用途によって呼び方が変わります。どれかは聞いたことがあるかもしれませんね。
最近はスマホに搭載されるSoCのように、CPUと周辺電気回路が１つのチップになっているものもあります。
このサイトではそれらを総称して「CPU」と呼んでいます。
では、CPUとは何なのかについて見ていきましょう。
CPU（Central Processing Unit）とは
CPUは「中央処理装置」の略称で、コンピュータの頭脳にあたる部分です。プログラム（ソフトウェア）の指示に従って計算や命令の処理を行い、システム全体の動作を制御します。また、外部環境などの各種情報を受け取ったり、他のデバイスと通信したりする機能を備えています。
CPUの構成
CPUは、演算処理を実際に行うための「コア」と、それを補助するための一時的な記憶を司る「レジスタ」、CPU内外の情報をやりとりする「I/O（アイ・オー）」で構成されています。CPUの最も外側には端子（ポートといいます）があります。
- コア：実際に処理をする部分
- レジスタ：コアが処理をするために必要な各種数値を一時的に保持するメモリ
- I/O：CPU内外で情報をやりとりする周辺機器の集まり
- ポート：CPU内外で信号をやりとりするための端子
最近は集積化が進み、キャッシュメモリという超高速メモリも搭載されていることが多くなっています。そして通信や動作補助のための「周辺機器（ペリフェラル）」も搭載されています。
CPUがやっていることをまとめてみましょう。
- 計算、演算処理：数値計算やデータ処理を高速で行います。
- 制御機能：他のハードウェアやソフトウェアの動作を管理します。
- 情報のやり取り：メモリやストレージ、他の機器とのデータ交換を行います。
ここまでの内容は、他のECU、MCU、MPU、GPUで共通しています。
ECU（Electronic Control Unit）とは
ECUは「電子制御装置」の略で、主に自動車の電子システムを制御する装置です。エンジンやブレーキ、エアバッグなどの制御を担当し、安全性や性能の向上に貢献しています。後述のMCUとの区別はかなりあいまいで、自動車に搭載されるものを単にECUと呼んでいます。
ただ、ECUはMCUよりも過酷な（振動が多い、周辺温度が高い）環境で使われることが多いため、頑丈に作られている傾向にあります。また、コネクテッド・カーのようにネットワークと接続することもあり、セキュリティ面も強化されてきています。
紛らわしいですが、自動車業界では「Engine Control Unit」の略でECUということもあります。
MCU（Micro Controller Unit）とは
MCUは「超小型制御装置」の略で、制御に重きを置いたものです。かつてはCPUに、制御のための周辺機器を追加したものをMCUと呼んでいましたが、今では制御のための周辺機器が搭載されていないものが無いため、CPUとMCUはほぼ同義と言ってよいと思います。
ただ、メーカーはMCUという呼称を採用しているところが多いため、部品を探すときには「MCU」で探した方が見つかりやすいです。
MPU（Micro Processing Unit）とは
MPUは「超小型処理装置」の略です。略称が似ているものが多く混同しやすいですね。
Processing（処理）を前面に出している通り、処理能力を強化したものという位置づけで、PCに使われるような高性能のものがMPUと呼ばれます。高クロックで動作するコアを複数搭載し、大容量のキャッシュメモリを備え、ポートの数も膨大で高価です。
組み込みシステムにMPUが使われることはほぼありませんので、このサイトではMPUには言及しません。
GPU（Graphics Processing Unit）とは
GPUは「画像処理装置」の略です。MPUよりさらに処理能力に特化しており、ほぼ制御機能を持っていません。その代わり膨大な数値演算を並列で行うことを得意としているため、科学演算やAIの処理が得意です。PCでは、計算処理をGPUに任せて他の処理をMPUが行う、というように役割が分かれています。
かつてDSPという信号処理演算向けのプロセッサがありました。GPUはそれの進化先といえます。
こちらも組み込みシステムに使われることはほぼありませんので、このサイトでGPUには言及しません。
CPU、ECU、MPU、GPUの違いまとめ
それぞれの違いを一覧にしてみました。（本サイトではまとめて「CPU」と呼んでいます）
| 種類 | 役割 | 主な用途 |
|---|---|---|
| CPU | 制御と計算（≒MCU） | 組み込み機器 |
| ECU | 自動車の電子システムの制御 | 自動車（車両） |
| MCU | 制御と計算 | 組み込み機器 |
| MPU | 高速演算と制御 | PC、サーバー |
| GPU | 超高速演算 | 科学計算、AI、仮想通貨 |
おわりに
「CPUとは何か」から始まり、ECU、MCU、MPU、GPUとの違いについて解説しました。それぞれの役割や用途を理解することで、電子機器やテクノロジーへの理解が深まります。これから新しいデバイスを選ぶ際や、技術のトレンドを追う際に、ぜひ参考にしてください。